太右衛門と天狗

更新日:2024年02月01日

ページID : 8320

今から450年もむかしのこと、八幡平に太右衛門たうえもんという人がいた。この太右衛門は、力が強くて、太い松の木を根っこから引きぬくほどだった。

太右衛門はいつも、「何とかして、天狗てんぐみたいに力持ちの人になりたい」と考えていた。

そこで太右衛門は、近くの夜明島よあけしまの奥深くに住んでいるという天狗にあこがれて、ついに家を出て行ったのである。

40歳も過ぎたある夏のこと、夜明島のずっと奥まで入っていくと、とてもとても大きな千丈幕せんじょうまくと呼ばれる岩にたどり着いた。その岩の上からは水が勢いよく落ちて、その滝の水しぶきは光が当たると、きれいな五色ごしきにじを描いていた。地面からは「どーん、どーん」と大きな音が鳴り響くほど大きな滝であった。

この滝は、とまり滝という滝で、太右衛門は静かにかしこまって滝の前まで歩いて行った。そして、手を合わせて、「何とかして俺に神通力じんつうりきを与えてくれ」とじっと拝んだ。

すると、「私は、女滝だ。おまえの願いはかなえられない」と滝の中から声が聞こえてきた。

がっかりしたが、太右衛門は40歳を過ぎていたものの非常に力持ちであったため、あきらめずにさらにどんどん奥に入っていった。

しばらくすると、高さ300尺(約90m)もある夜明島渓谷で一番立派な茶釜ちゃがま滝の前に出た。そこでまた太右衛門は拝んだ。

ずっと拝んだ。すると、「いかにも俺が男滝だが、もう歳を取ってしまって、お前の願いを聞いてやることができない」と滝が答えた。

太右衛門は、それなら仕方がないと肩を下して、歩いてきた川原を戻った。

“トッチャカ森”まで来ると、急に下っ腹が、うっうっ、となって、不意に大きなが「びーっ」と鳴り響いた。あまりの大きな音に、あたりの木もぶるぶると震えだしているではないか。太右衛門は「何と、大きな屁だ。俺には、まだまだ力が残っている。もう一回、願い事を頼みに行こう」と言って、茶釜滝へ戻った。

それから、何日も何日もお願いしていると、滝が、「それほどまでの頼みならば、神通力の一端を授けよう。われについて来い」と言って、滝の化身けしんの天狗が現れた。

太右衛門は喜んで天狗について行き、毎日厳しい修行を続けた。何年も修行を続け、ついに天狗の力を手に入れることができた。

この記事に関するお問い合わせ先

産業活力課 観光交流班

〒018-5292 秋田県鹿角市花輪字荒田4番地1
電話:0186-30-0248 ファックス:0186-30-1515
お問い合わせはこちらから